
アガロースゲル電気泳動
目次
原理
アガロースゲル電気泳動は、核酸分子をサイズに基づいて分離する一般的な方法です。核酸分子は電気陰性を持つため、電場中で陽極に向かって移動します。アガロースゲルは多孔性で、小さい分子ほど速くゲルを通過します。
サンプルがRNAの場合は、ホルムアルデヒドを用いた電気泳動を行います。RNAは高次構造を形成しているため、そのままではゲル上での移動がサイズに比例しません。そこで、ホルムアルデヒド電気泳動は、サンプルにホルムアルデヒドを加え、また、ホルムアルデヒドを含むゲルを使用してRNAの二次構造を壊してRNAのサイズに基づいて分離します。
実験手順(DNA)
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**アガロースゲルの準備①:**アガロース粉末をTAEバッファー溶液等とともに加熱し、溶解させた後、ゲル型に流し込んでコームをさして固化させます。
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**アガロースゲルの準備②:**アガロースの濃度は通常重量パーセントで1%ですが、分離したい核酸のサイズによって0.5%〜2%程度まで変更可能です。
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**サンプルのロード:**準備したゲルのウェルにDNAのサンプルを適量加えます。
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**電気泳動:**電源を接続し、一定時間電気泳動を行います。
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**染色と可視化:**EtBr等の特定の染色液を用いてゲル中のDNAを染色し、UVトランスイルミネーターなどで可視化します。
実験手順(RNA)
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ゲルの準備: ホルムアルデヒドを含むアガロースゲルを作成します。通常のアガロースゲルより柔らかいことに注意します。またホルムアルデヒドは毒性があることにも注意します。
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サンプルの準備: RNAサンプルにホルムアルデヒドを加え、65℃程度で15分ほど加熱して二次構造を壊します。
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電気泳動: 電気泳動装置にゲルをセットし、RNAサンプルをロードして電気泳動を行います。
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染色と可視化: ゲル中のRNAをEtBr等の特定の染色液で染色し、RNAバンドを可視化します。
分子量の推定
核酸の分子量は、電気泳動後の移動距離とλ/HindIIIなどの既知の分子量マーカーとの比較によって推定されます。
PAGEとの比較
アガロースゲル電気泳動は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)と比較されることが多いです。PAGEは主にタンパク質の分離に用いられます。PAGEでタンパク質の分離をする実験はSDS-PAGEと呼ばれます。
問題点や課題とその対応策
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問題点:長い核酸の分離が難しい、また、RNAの場合はホルムアルデヒドの毒性が問題となります。
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対応策:長い核酸に対してはパルスフィールド電気泳動の利用、ホルムアルデヒドの毒性についてはドラフト等で作業をする等の安全な取り扱い手順の遵守が挙げられます。
応用
アガロースゲル電気泳動は、遺伝子クローニング、PCR産物の確認、遺伝子発現解析など多様な分野で応用されています。
まとめ
アガロースゲル電気泳動は、生命科学研究における基本的な技術の一つであり、分子生物学の実験で広く利用されています。そのシンプルさと高い効率性は、研究者にとって重要なツールを提供しています。

