
エクソーム解析
目次
原理
エクソーム解析は、ゲノムDNAからエクソーム領域だけを抽出し、次世代シーケンサーを使用してその配列を決定します。
エクソーム領域はキャプチャプローブと呼ばれる短いDNA断片を使用して対象とするエクソーム領域に対して選択的にハイブリダイズ(塩基対結合)させて、抽出します。
その後、次世代シーケンサーを使用して抽出したエクソーム領域のDNAsを一つ一つ読み取り、配列を決定します。
実験手順・解析手順
-
- まず、試料から全ゲノムDNAを抽出します。
-
- 次に、試料DNAを断片化し、これらの断片の両端にアダプター(PCR増幅やキャプチャプローブとのハイブリダイゼーションを可能にするためのDNA片)を付加します。
-
- このアダプターを付加したDNA断片を、前もって設計したエクソーム領域と対応したプローブと混合し、ハイブリダイゼーションさせます。この際、プローブはエクソーム領域を対象としたDNA断片なので、試料からエクソーム領域だけが選択的に抽出されます。
-
- その後、混合液から対象となるエクソーム領域のDNAのみを抽出します。
-
- 次世代シーケンサーを用いて、抽出されたDNAの配列を読み取ります。
-
- 確認したDNA配列を元のゲノム配列と比較し、変異などの遺伝子配列の変化を解析します。
関連する概念・用語との比較
エクソーム解析に対し、全ゲノム解析(Whole genome sequencing)という手法があります。全ゲノム解析は、名前のとおり全ゲノムの配列を解読する手法です。
全ゲノム解析ではエクソンだけでなく、イントロンや間隔領域なども解読しますが、一方でそれらの領域の大部分は無意味な配列(ジャンクDNA)であり、また解読には大量のデータと時間を必要とします。
このため、効率的に遺伝子解析を行うためにはエクソーム解析が適しています。
歴史・経緯
エクソーム解析は、次世代シーケンサー(NGS)の登場により可能となりました。
これまでのSanger法によるDNAシーケンシングでは、時間と費用がかかるため全ゲノムの解析は困難でしたが、NGSは高速かつ大規模な配列決定を可能にし、エクソーム解析の登場に繋がりました。
問題点・課題とその対応策
エクソーム解析にもいくつかの問題点や課題があります。まず、エクソーム解析ではエクソンのみを対象としているため、イントロンや間隔領域などエクソン以外の領域の変異は検出できません。このため、それらの領域に重要な変異が存在する場合は見過ごしてしまう可能性があります。
また、エクソーム解析は複雑な配列やGC含量が高い領域の解析が難しいという課題もあります。これらの問題点に対応するためには、全ゲノム解析を併用したり、より高度な解析手法の開発が求められます。
応用
エクソーム解析は、遺伝性の病気の原因遺伝子の特定や複数のサンプル間でのゲノミック変異の比較、がんの遺伝子変異の解析など、様々な医学的な研究や臨床応用に用いられています。
また、種間の進化的な関係を解析するなど、生物学的な研究にもその応用が広がっています。エクソーム解析はその効率性から今後も広範に利用されていくことでしょう。

