
メタゲノム解析
目次
実験手順と解析手順
メタゲノム解析の手続きは大きく分けてサンプルの採取、DNAの抽出、シーケンス、データ解析の4ステップからなります。
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- サンプルの採取: 調査対象となる環境からサンプルを採取します。これには土壌、水、腸内微生物など多岐にわたる可能性があります。
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- DNAの抽出: 採取したサンプルから全ての微生物のDNAを抽出します。専用のキットを利用することが一般的です。
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- シーケンス: 抽出したDNAをNGS等のシーケンサーにかけ、その配列情報(シーケンス)を取得します。現在ではIllumina社の次世代シーケンサーが一般的に利用されています。
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- データ解析: 取得したシーケンスデータを解析し、微生物の種構成や機能を推定します。これにはバイオインフォマティクスの手法が必要となります。
データ解析の具体的な解析手順は以下の通りです:
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- 品質管理: リードの質を確認し、低品質なリードを除去します。
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- 種同定: リードに含まれる16S rRNA遺伝子やCOG (Clusters of Orthologous Groups) を用いて配列を種に分類します。
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- 機能解析: KEGG (Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes) などのデータベースを用いて、各種の機能を予測します。
歴史と経緯
メタゲノム解析は、近年の次世代シーケンサーの発展と共にその精度と採用範囲が拡大してきました。
以前は培養による微生物の同定が主流でしたが、現在では非培養微生物についてもその存在と機能を解析できる事から、環境微生物学は大きく発展しました。
問題点と課題
メタゲノム解析には以下のような課題が存在します:
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- 種の同定の精度: シーケンスデータから種を同定するための既知のデータベースがまだ完全でなく、全ての微生物を特定することが困難です。
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- データ解析の難易度: メタゲノム解析のデータ解析は専門的な知識を必要とし、一般の研究者には難易度が高いです。
これらの課題に対し、以下の対策が有効とされています。
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- データベースの充実:データベースを更に充実させることで種の同定の精度を上げる。
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- ソフトウェアの開発:解析ソフトウェアの開発及び教育により、一般の研究者でもメタゲノム解析を行えるようにする。
応用
メタゲノム解析は、微生物が幅広い環境でどのように存在し、どのような機能を果たしているかを明らかにするための重要なツールであり、生物学、環境学、医学などの分野で広く利用されています。それぞれの分野で得られた知見は、新たな微生物資源の探索、環境保全、病気の診断と治療など、具体的な問題解決に活かされています。

