
ノーザンブロッティング
目次
原理
ノーザンブロッティングの原理は、まずRNAを一本鎖に変性させ、それをアガロースゲル電気泳動等により大きさに応じて分けるところから始まります。泳動後にメンブレンへRNA分子を転写させます。その後、RNAを一本鎖DNAプローブと呼ばれる特定の配列を持つDNA断片で目的のRNAの大きさおよび量を検出します。一本鎖DNAプローブは対となるRNA配列とハイブリダイゼーション(塩基対の形成)を行うように設計されています。
手順
ノーザンブロッティングの主な手順は以下の通りです。
-
- RNAの抽出: 実験対象となる細胞から全RNAを抽出します。
-
- RNAの電気泳動: RNAをアガロースゲル電気泳動等にかけて大きさによって分けます。
-
- RNAの転写: 電気泳動後のゲルからRNAを膜(通常はニトロセルロースやナイロン)に転写(移行)します。これによりRNAの配置が膜上に保存されます。
-
- プローブのハイブリダイゼーション: 標識したプローブを添加し、ターゲットRNAとハイブリダイゼーションを行います。
-
- RNAの検出: ラジオ活性、蛍光、または酵素を用いてDNAプローブを検出し、対象のRNAを量的に解析します。
特徴
主な特徴としては一部のRNAのレベルを特定・定量化することが可能であるため、遺伝子の発現レベルや遺伝子産物の大きさ・構造を求める際に用いられます。
すぐに使用できる商用キットが存在し易しく便利ですが、一方で非常に時間がかかり、危険な放射線標識を必要とすることから、現在ではより高速で安全な代替方法が開発されています。
関連する実験との比較
ノーザンブロッティングはサザンブロッティングやウェスタンブロッティングと並ぶ重要な分子生物学的手法の一つです。サザンブロッティングはDNAの分析に、ウェスタンブロッティングはタンパク質の分析に使用されます。
歴史や経緯
ノーザンブロッティングは1977年にジェームズ・アルウェインによって初めて詳細に記述されました。その名前は、この手法がサザンブロッティングの原理をRNAの解析に適用したものであることから、南の逆方向である北を意味するノーザンと名付けられました。
問題点や課題とその対応策
ノーザンブロッティングにはいくつかの問題があります。最も明らかな問題は時間と手間がかかることです。また、ラジオアクティブな標識を必要とするため、扱いには慎重さが求められます。つまり、放射能リスクや処分に対する取り扱い等の問題があります。一方、非放射線標識法も存在し、多くの研究者がこちらを用いています。この他、比較的大きな量のRNAを必要とするため、一部の実験条件では実行が難しい場合があります。
これらの問題点のいくつかは、近年の技術の進歩により改善されています。リアルタイムPCRやRNAシーケンシングのような新たな技術は、より迅速で正確な遺伝子発現解析を可能にしたうえ、サンプル消費量も少なくて済む点でノーザンブロッティングに優れています。

