
RNA-Seq
目次
概要
RNA-Seqは、主にmRNAを標的とした高精度な定量可能な方法で、RNAの配列を直接読み取ることで実現されます。
まず抽出および精製されたmRNAを一定の長さにまで断片化し、その後ランダムプライマーあるいはオリゴdTを用いて逆転写します。生成されたcDNAにアダプター付加およびPCR増幅などをしてライブラリを調製し、Illuminaのシーケンスプラットフォーム等の次世代シーケンサーでcDNA配列を読み取ります。
読み取られた配列は(ショート)リードと呼ばれ、バイオインフォマティクスのツールを用いてゲノム上にマッピング(アラインメント)されます。各遺伝子上にマッピングされたリードの数をカウントし、全リード数や遺伝子の長さで補正することで、mRNA量が算出されます。
手順
RNA-Seqの標準的な手順を示します。
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- RNAサンプルの準備: Total RNAをRNA抽出キット等を用いて、ペレットや細胞または組織から精製します。
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- mRNAの精製: オリゴdTの磁気ビーズやrRNA除去キットを用いてmRNAのみを抽出します。精製mRNAの濃度はQubitやNanoDrop、精製度はBioanalyzer等を使用して計測されます。
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- ライブラリーの作製: 精製mRNAはフラグメンテーションされます。その後、ランダムプライマーあるいはオリゴdTと逆転写酵素を使用してcDNAを生成します。cDNAは末端修飾され、アダプターが順次付加されます。最終的に、PCR増幅によりcDNAライブラリーが生成されます。
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- シーケンス: ライブラリーは次世代シーケンサーにロードされ、リードが得られます。
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- バイオインフォマティクスのツールを用いて、各遺伝子上にマッピングされたリード数に基づいてmRNA量を計算します。カウント方法にはRPKMやFPKMあるいはTPMが用いられます。
特徴
広範な応用先
RNA-Seqは非常に詳細な情報を提供することができます。新規遺伝子の発見、SNPの検出、遺伝子のスプライシングバリアントの発見などが可能です。
高感度
RNA-Seqは非常に高感度で、リード数を増やすことで転写因子等の低い発現レベルの遺伝子も検出することが可能です。
ワイドレンジ
RNA-Seqは、低発現遺伝子から非常に高発現遺伝子まで、広範囲な発現レベルの遺伝子をカバーすることが可能です。
問題点と対応策
高コスト
RNA-Seqは依然として高額なため、一部の研究者にとってはハードルが高いかもしれません。
ライブラリー調製に必要な実験費用から次世代シーケンサーによる配列決定までを含めると2024年1月時点で1サンプルあたり数万円かかります。
技術知識
次世代シーケンサーが出力するリードのデータからmRNA量の算出、また、mRNA量のサンプル間の比較には、高度なバイオインフォマティクスや統計学の知識が必要です。またそれらの生物学的な解釈には専門的な知識が必要です。
これらの問題を解決するためには、生物統計学者やバイオインフォマティクス専門家との密な連携が必要となります。

